インフォグラフィックでわかる
日本の社会問題
自治体でのChatGPT
~活用例と注意すべきポイントとは?~

自治体を取り巻く環境の変化とChatGPTの登場
日本の自治体は人口減少などの影響による職員減少の反面、社会インフラの老朽化や空き家問題など新たに担うべき業務の増加に直面しています。求められる公共サービスが増加しているにも関わらず、それを担う行政職員が減少している自治体は、限られたリソースの最大化を常に考える必要があります。
このような自治体を取り巻く環境の変化に関しては、「行政職員減でもニーズの多様化進む 企業・住民と協働で公共サービス(日経グローカル10/16号掲載)」で、社会インフラの老朽化に関しては「自治体の抱える社会インフラの整備問題 最適に維持・管理するためのポイントは」に詳しく記載されていますので、ぜひご覧ください。
今回取り上げるChatGPTは、OpenAIという研究組織が開発し、2022年11月末に公開したAIを用いたチャットサービスです。Web上にある大量のデータを基に学習する文章生成言語モデル(GPT:Generative Pre-trained Transformer)を持ち、この技術を用いて会話形式で質問に回答するほか、Excelの関数やプログラムソースコードの作成が可能です。効率的な情報提供、高速な文書処理はもちろん、会話調でのスムーズなコミュニケーションを得意としています。
このようなAI技術の活用は、限られたリソースの最大化が求められる自治体にとって解決策の1つになるのではないでしょうか。
ChatGPTを有効活用するために押さえるべきポイント
では、ChatGPT活用に向けて、押さえるべきポイントについて解説していきます。
まず、ChatGPTの得意なことと、注意すべきことを知っておくことが重要です。
ChatGPTが得意なことは、滑らかな文章を作成すること、幅広い質問に答えられること、また創造的な回答ができることなどが挙げられます。これらからChatGPT活用例として、文書の翻訳はもちろん、文章の要約や企画書の作成、アイディアの創出のための壁打ち相手など、さまざまな用途が考えられます。

ではChatGPT活用において注意すべきことはなんでしょうか。特にChatGPTの回答は、出典が不明であること、正確性に欠ける場合があることが注意すべき点としてあげられます。そのため、「わからないことを調べる(正確な回答を探す)」という一般的な検索エンジンのような使い方は避けなければいけません。ChatGPTの回答は、そのまま転用するのではなく、あくまでたたき台として活用することで、業務での有効活用ができるでしょう。

次に、よりChatGPTを活用する際に便利なものがChatGPT APIです。開発元のOpenAIから公開されているこのAPIを活用することで、さまざまなシステムとの情報連携が可能になります。そのため、例えば、自治体の質問応答システムやチャットボットなどにこのChatGPT APIを活用すれば、市民向け問い合わせサービスへChatGPTを搭載し、一問一答ではなく会話型での問い合わせ対応を実現することができます。
自治体におけるChatGPT活用例
では実際に、自治体業務へのChatGPT活用例を示していきます。
まずは自治体の内部事務におけるChatGPT活用例です。
ChatGPTにとって、テーマやキーワードをもとに文章を作成すること、与えた文章を要約すること、また文章を英語ほか複数の言語への翻訳することは得意分野です。定型的なビジネスメールや報告書などは、ポイントを指示することで、文章のたたき台を作成させることができます。また、関連する制度や法令などを調べながら書類を作成する際にも、自身で1つずつ検索せずとも、ポイントをまとめて回答するため、業務効率化につながります。
その他にも、ChatGPTは自治体が抱える課題解消のヒントを提供することもできます。例えば「自治体が主催するイベントを効果的に周知するにはどうしたらいい?」や「自治体窓口の混雑を解消させるためには?」といった質問をすると、ChatGPTは質問の要点を整理したうえで、複数の回答を提供してくれるでしょう。
ただし、上述しているとおり、それらの文章や回答はあくまでヒントであり、その内容の裏取り・検証や、自治体毎の実情に合わせた検討などを踏まえて活用する必要があります。
市民向けサービスへの活用例としては「問合せ対応」が効果的です。市民からの問合せ対応としてChatGPTを搭載したチャットボットの導入は、いつでもどこでも問合せが可能になるという点から市民の満足度向上と併せて職員の負担軽減にもなります。
日時や場所を選ばずに問合せができる、ということまでであれば、従来のチャットボットでも可能です。ただし、従来のチャットボットは、FAQ(一問一答)をベースに構築されていたため、応答範囲が限定的であることや回答が画一的になるという問題がありました。
それに比べてChatGPTは、大量の対話データで学習したものをベースにしているため、幅広い回答が可能であること、また文章生成AIのため、まるで会話をしているかのように滑らかな質問と回答を繰り返すことが可能になり、市民の利用しやすさが向上することが期待できます。
このような「問合せ対応」ができるChatGPTを作り上げるには、回答に必要な情報を読み込ませる等、相応の労力が必要になります。ただ、それが実装できた際は、職員・住民双方の大きな時間の効率化を図ることができるでしょう。
ここではChatGPT活用で何ができるのか、押さえるべきポイントは何か、ChatGPT活用例をまとめました。現在、88箇所の自治体(※1)がなんらかの形で生成AIを導入している状況です。全国の自治体数が1700強あることを考えると、まだまだ導入が進んでいるとは言えません。上述している押さえるべきポイントを押さえながら、まずは内部事務の効率化など、スモールスタートで進める必要があります。
※1 <出典>
株式会社Bocek「生成AI自治体導入状況カオスマップ」(2023年10月最新版)よりhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000114457.html
自治体を取り巻く環境は、職員の減少や、求められる公共サービスの増加によって大きく変化しています。このように、ChatGPTを活用することで、今あるリソースを最大限に生かすことはもちろん、生み出した時間を市民向けサービスの充実に振り向けていくことが可能になるでしょう。