インフォグラフィックでわかる
日本の社会問題
デジタル田園都市国家構想を実現するには
~ボトルネックと推進ポイント~
デジタル田園都市国家構想とは
昨今、日本は地方を中心に少子高齢化や人口減少(過疎化)、地域産業の空洞化といった課題に直面しています。デジタル田園都市国家構想(デジ田)とは、デジタル技術を活用した課題解決や魅力向上を通して、地方活性化の加速を目指した構想です。
具体的には、地方に
・イノベーションを生み出し仕事を作る
・人の流れをつくり地域を支える人材を確保
・結婚、出産、子育てしやすい地域、働きやすい環境づくり
・暮らしやすさ、地域の魅力の向上
を実現しようと、3つのKPIが掲げられています。
デジタル田園都市国家構想のKPI
①2024年度末までにデジタル実装を地方公共団体1000団体が取り組み
②2024年度までにサテライトオフィス等を地方公共団体1000団体に設置
③地域づくり・まちづくりを推進するハブとなる経営人材を100地域に展開
政府のつくったデジタル基盤を活用し、
地方創生を目指す
地域のデジタル化を推進するため、政府主導で「ハード・ソフト両面からのデジタル基盤の整備」や「デジタル人材の育成・確保」などデジタルの基盤づくりが進められています。光ファイバや5G等のデジタルインフラ整備、マイナンバーカードの普及・利活用拡大やデジタル人材育成プラットフォームの構築などがその代表例です。さらに、国が整備するデジタル基盤を基に自治体のデジタル化を後押しするための補助金、交付金も用意されています。
以上のことから、地方自治体には、自らが目指すべき地域ビジョンを描き、デジタルを活用した地方活性化の取組が求められていることがわかります。
日常を支える分野、少規模自治体等必要なところこそ
デジタル化が進まない現状
しかし実際のところ、地方自治体のデジタル化は思うように進んでいないのが現状です。例えば、全国的に見るとオンラインショッピングやキャッシュレス決済など消費分野でのデジタル化は進んでいるものの、行政や生活、医療などの日常を支える分野では後れを取っています。
また、人口規模が小さな自治体ほど住民1人当たりの行政コストは高い傾向にあることから、小規模自治体こそデジタル化の推進が求められていますが、政令指定都市や中核市を除いた小規模自治体ほど、デジタル化の取り組みが遅れていることも問題視されています。
このことから、日常を支える分野の利便性、人口・インフラ面からサービス格差が出ている地方の小規模自治体など、デジタル化の恩恵が必要なところこそ、進んでいないということができます。
地方自治体デジタル化における
推進のボトルネック
デジタル田園都市国家構想に向けた地方自治体のデジタル化が上手く進まない理由として、大きく次の3つの原因が挙げられます。
①デジタル化の目的意識が不十分
1つ目のボトルネックは、自地域が何のためにデジタル化を推進するのかという、基本的な目的意識が欠けていることです。これでは、国の方針に沿って大枠のデジタル化方針を策定しても、アクションプランに繋げられません。
これまでにもデジタルツールの導入により部分的にデジタル化は進められてきましたが、その主眼は「ツールの導入」による「業務効率化」にありました。一方でデジタル田園都市国家構想は、デジタルを「活用」した「地域の課題解決」を目的としているため、地域や住民のメリット など、課題解決を一義としたデジタル化を目指さなければ構想実現は難しいでしょう。
②誰が何をするべきかわからない
2つ目は、誰が何からすべきか見失ってしまうことです。デジタルが専門領域でない、現場職員に任せきりだと一向にデジタル化が進まなくなりがちです。一方で、DX推進部署のみで進めると、現場職員しか知り得ない住民の声、業務の実態などがわからないまま、課題解決とは一切関係のないツールの導入となってしまいかねません。
本来、デジタル化は地域課題を解決する手段のはずです。DX推進部署が中心となること、さらに現場職員を巻き込み、住民の声、行政事務や住民手続の実態を踏まえて、体制もデジタル化の対象もトータルで検討・推進していくことが求められます。
③デジタル化を推進する人材がいない
最後に問題となるのは、デジタル化を推進する人材です。住民の暮らしの便利にする上では、課題設定、具体的なアクションプラン、現状維持に陥りやすい関係部署との調整を行える人材が必要です。
デジタルツールに対する知識だけではなく、幅広い視座での検討と関係者間の調整のスキルを備えている人材を確保できるかも課題の1つとなります。
地域デジタル化に向けたアクション
このようなボトルネックを解消し、デジタル田園都市国家構想を実現するため、取り組み時におけるポイントを5つご紹介します。
1|デジタル化に向けた合意を取り、課題の整理をする
まず、デジタル化の推進に向け組織として団結することが重要です。スムーズな推進のために、DX推進部署を中心に各部署が協力して進めていけるよう、デジタル化推進の体制をトップダウンでつくりましょう。
そのうえで、デジタル化に向けた地域課題を現場職員と共同で整理しましょう。利用の多い行政手続や住民からの 日々の指摘等だけでなく、他の自治体の事例や、パブリックコメントを参考に課題を検討し、設定することもおすすめです。その際、ステークホルダーへの影響度や関係する周辺業務も洗い出しておくと、後々の検討が効率的に実施できます。
2|着手できるところから進める
次に、設定した課題に対して優先的に取り組む順番を決めます。地域としての意義の大きさや住民等への影響度、ハードルの高さや他自治体での類似事例の有無などから総合的に判断しましょう。この際、デジタルの導入だけでなく、DX推進部署と課題の関係部署が共同で、周辺業務の再設計を並行して進めることが必要です。
3|デジタル化に関連した補助金等を獲得する
また、国の補助金や交付金の制度は可能な限り活用したいところです。令和5年度で代表的なものとしては、「デジタル田園都市国家構想交付金」と「普通交付税 地域デジタル社会推進費(マイナンバーカード利活用特別分)」が挙げられます。いずれも、当該自治体のマイナンバーカードの普及状況が一定以上であることなど、一定の受給要件があることから、自地域の状況を踏まえて積極的に活用しましょう。
4|事業者と共同する
また、ツール導入時は事業者の協力を仰ぐことも効果的です。この際、ツールの導入部分だけでなく、内部検討だけでは現状維持になりがちな 課題抽出や、周辺業務の再設計などの企画段階から参画を依頼することがおすすめです。既存ツールの問題を把握し、改善方法を探るサイクルを作ることで、関係部署も含めた自治体全体に知見が蓄積されます。
5|地域・住民向けのアプローチをする
地域の実情や住民の声を踏まえてデジタル化の効果を上げていくためには「どの部分をどう改革するため、どのように便利になる」か住民に認知され、使ってもらうための周知が必要です。
また、デジタルツールに慣れていない層を取り残さない取り組みも求められます(デジタルデバイド対策)。使いやすいUI(ユーザインタフェース)はもちろん大切ですが、そもそもツールを触らない人々にも気軽に操作してもらえるよう、操作支援やスマホ教室を開催するなど、地域・住民に寄り添っていく姿勢も必要です。
デジタル化では、地域課題を解決することを念頭に、上記5つについて事前に計画を立て、適宜見直しながらの推進が求められます。経験豊富な事業者はもちろん、先駆者的な自治体にも協力を求めながら、自地域のデジタル化を進めていきましょう。