札幌市 町田副市長対談【後編】
札幌市の活性化に向けた取り組み

　この「挑戦する街」が、1番大事だと思うのです。私が市役所に入ったとき、札幌市の基本構想に、「先駆的な実験を継続する街でありたい」という1文がありました。先駆的な実験を継続するというのは、挑戦するという言葉と同義かと思います。

　行政というのは、市民に対してサービスを提供していますから、失敗が許されない立場です。それでも実験という言葉を使うことが、すごく素敵だと思いました。札幌市には、江戸時代前のアイヌの歴史、その前の縄文人、旧石器人の歴史があるのですが、ここ最近で、周りの市町村と合併して、これだけの大きな街になっている。だから、挑戦することでいつまでも若い街であり続けていて、市民に対して新しいサービスも提供できていくことになるのではないかと思っています。

　札幌市の産業構造としては、都市としての需要に対応していくような製造業しかなくて、域際収支という面からはずっと赤字の街でした。昔の重厚長大型の製造業が盛んだったのは、東京近郊、大阪、名古屋近郊です。北海道は消費地から遠いということで、製造業の立地は見込めませんでした。

　しかし、情報関連産業が出てきて、これなら札幌でもできるだろうという話になりました。札幌テクノパークを札幌市が作り、情報関連産業の集積をいち早く打って出て。それが、その後サッポロバレーという言い方にも繋がり、今のIT産業、コンテンツ産業、データセンターなどに繋がっているのだと思います。

　虐待防止の仕組みづくりですね。札幌市でも本当にかわいそうで申し訳ない虐待の問題がありました。札幌市としては、児童相談所や区役所のご所見を連動させて、虐待で子どもが命を落とすようなことが二度とないような仕組みを作っているところです。

　虐待の防止の仕組みとは何かというと、お母さん、お父さんに対しての働きかけです。周りの支援がない中で子育てに悩む若い方々の支援を地域で実施するために、地域の皆さんを調整、コーディネート、ファシリテイトとしていくような専門職の方を中心とした仕組みをつくっていく必要があります。児童相談所にその専門職を要請していかないといけません。

　加えて、児童相談所の職員の業務負荷を下げ、より対面でのサービスに注力できる仕組みも導入しています。具体的には、相談事案に基づき過去のデータなどを活用した共有、アラート、分析などを機械的に行うことで、これらの事務に係る職員の負荷を減らすための取り組みをしています。

　まちづくり戦略ビジョンにはウェルネス、ユニバーサル、スマートの柱があります。特にウェルネスは、市民が生涯を通じて健康であり、社会との関わりを持っていくことを目指しています。そのためにはいかに小学生・中学生の時から運動習慣を身に付けて、スポーツに携わるかというところが重要です。そうなると、すごく気掛かりなのは札幌市の中学生の体力です。昔は、中学校では運動部が盛んでしたが、今はそうでもない。学校でスポーツができなくなったら、地域のスポーツクラブなどがそれを担っていくような形にならざるを得ないですが、地域でスポーツを教えるのは、スポーツチームで活躍した人ですよね。そういう方々に指導者になっていただく仕組みを作らないといけない。

　それから、戦略上で大きな視点としては、環境の問題。札幌市、北海道というのは、1年間を通じて風が吹きます。風を電力にして各地に供給する仕組みを、札幌市、北海道が受け入れてきています。エネルギー、環境という面で貢献できる地域にするというのは、夢のある話ですよね。そういう環境に負荷を与えないクリーンな地域、街を作ることも、地域全体で取り組んでいこうと提案していけば、行政がある意味需要を作ることになります。その需要に応える、または投資する企業を呼び込んできて、さらに需要ができて…ということをすると、これは非常に面白い話です。

　雪祭りなんかも、プロジェクトマネジメントですよね。市民雪像を作っていただきますけども、あれ1つを作るのでも、できると達成感があります。雪像を色々な観光客の皆さんに褒めていただけると本当に嬉しいですし。大雪像作りに関わると、雪をこねているだけの人も、大雪像を作るような感覚を持てるものがあるのです。

　札幌市、北海道の雪って水分が少ないから、最後に雪像にシャーベット状の雪を貼り付けてきれいにするのです。その時には大きな缶に雪を入れて、水を入れて、こねて、シャーベット状にして貼り付けていきます。シャーベットをする人は1日中シャーベットをしているわけです。それも、ここの部分の雪はこういうことに使うんだと話をするとモチベーションアップに繋がり、それがきっとプロジェクトの成功につながると思います。

　札幌市では、課題探求的な学習を実施しています。自ら課題を見つけて、その課題に対して調査研究し、どう対応していくかという基本的な態度を、中学高校のうちから身に付けようということです。最初は自分の生活上の課題だと思いますが、組織に入ればその組織の課題、社会、地域、さらには国家の課題になる。そうなると素晴らしいですよね。

　そうならざるを得ないのではないかと思います。

　札幌市では、高齢者の人口が増えています。そうなると、ますます札幌市としては、いろんな高齢サービスを充実しなければいけないし、それからRapidusの運営。あと、特に首都圏から来られる方は、学校環境の問題に大きな問題意識を持っておられると言います。先ほどもありましたが、札幌市としては、公教育で、課題探求型の学習を一生懸命やっています。

　このように、都市としての総合力を高めていくようなことを、様々な単位でやっていく。さらに交通インフラではニセコとの間で新幹線ができますが、これもすごいことです。ニセコと札幌市が一つの大きなスキーリゾートエリアになった場合、ニセコでスキーをして、市内で遊ぶなど、世界でもすごく楽しいエリアになると思います。